「うちはハラスメント対策、ちゃんとやってますよ」
企業の相談現場で、最もよく聞く言葉のひとつです。
就業規則にハラスメント禁止を書いている
相談窓口を一応つくっている
研修を年1回やっている
しかし——
それだけでは、もはや不十分 な時代に入っています。
近年の労働トラブルや裁判例を見ると、
企業が敗訴・是正指導を受ける理由の多くは、
「対策がなかった」ではなく
「対策はあったが、機能していなかった」
という点にあります。
この記事では、
なぜハラスメント対策が厳しく見られるようになったのか
「形だけの対策」が危険な理由
今後の法改正・行政運用の方向性
企業が本当に整えるべき実務対応
を、専門家の視点でわかりやすく解説します。
■ そもそもハラスメント対策は「義務」である
まず大前提として、
パワハラ・セクハラ等のハラスメント対策は、
企業の努力義務ではなく「法的義務」 です。
▼ 現行制度の整理
現在、企業には以下が義務付けられています。
パワーハラスメント防止措置
セクシュアルハラスメント防止措置
妊娠・出産・育児介護に関するハラスメント防止措置
これらはすべて、
「相談体制の整備」「再発防止措置」まで含めて義務
とされています。
■ なぜ今「実効性」が強く問われているのか?
▼ ① ハラスメント相談が急増している
リモートワーク下でのパワハラ
LINE・チャットでの言動
評価・配置をめぐる圧力
ハラスメントの形が多様化し、
企業が把握しにくいケースが増加しています。
▼ ② 「相談したのに何も変わらなかった」問題
非常に多いのが、次のパターンです。
相談したが放置された
誰にも共有されなかった
逆に不利益な扱いを受けた
この場合、
企業の対応そのものが違法 と判断される可能性があります。
▼ ③ 裁判・労基署の判断基準が変わってきている
近年は、
「ハラスメント行為があったか」
だけでなく
「会社がどう対応したか」
が、厳しくチェックされます。
■ “形だけの対策”が危険な理由
▼ ① 相談窓口が名ばかりになっている
担当者が上司と近い関係
相談内容が筒抜け
相談後のフォローがない
この状態では、
「相談できない窓口」 と評価されるリスクがあります。
▼ ② 調査が不十分・中立性がない
加害者の言い分だけを聞く
被害者の話を軽視する
客観証拠を集めていない
これでは、
企業が責任を果たしたとは認められません。
▼ ③ 再発防止措置が取られていない
口頭注意だけ
配置転換なし
研修も行わない
再発防止策がない場合、
「組織として放置した」と判断されやすくなります。
■ 今後の法改正・行政運用の方向性
ここが今後さらに重要になるポイント。
▼ ① ハラスメント防止措置の“質”が問われる
相談件数
対応スピード
調査方法
再発防止策
これらを含めて、
実効性があるかどうか が評価対象になります。
▼ ② 相談者保護の強化
相談したことによる、
配置転換
評価低下
嫌がらせ
があれば、
企業の責任がより重く問われる 流れです。
▼ ③ 管理職の責任が明確化される
「現場任せ」「知らなかった」
は通用しなくなり、
初動対応
上司の関与
報告義務
が強く求められます。
▼ ④ 外部相談窓口の重要性が増す
社内対応だけでは不十分とされ、
第三者的な窓口の設置 が評価されやすくなっています。
■ 企業が直面するリアルなリスク
▼ ① 損害賠償請求・慰謝料請求
ハラスメント行為だけでなく、
対応不備そのものが損害賠償の対象 になるケースも増えています。
▼ ② 労基署・労働局からの是正指導
特にパワハラ対策は、
行政指導が入りやすい分野です。
▼ ③ 社内の信頼崩壊・人材流出
「相談しても意味がない」
という空気が広がると、
優秀な人材ほど離職します。
■ 企業が“今すぐ”整えるべき実務対応
▼ ① 相談窓口の実効性チェック
本当に安心して相談できる体制か?
▼ ② 初動対応フローの明文化
相談を受けたら何日以内に何をするか。
▼ ③ 調査体制の中立性確保
複数人・第三者を関与させる。
▼ ④ 再発防止策の具体化
研修・配置・指導内容を明確に。
▼ ⑤ 管理職研修の実施
「知らなかった」をなくす。
■ 従業員側の視点も重要
被害を受けた側は、
相談していい
記録を残す
外部窓口を使う
という選択肢があります。
我慢し続ける必要はありません。
■ まとめ:ハラスメント対策は“企業の姿勢”が問われる
ハラスメント対策は、
単なるルール整備ではなく、
組織の文化
管理職の意識
企業の危機管理能力
が問われる分野です。
今後は、
「対策をしているか」ではなく
「機能しているか」
が、判断基準になります。
早めの見直しが、
企業のリスクを大きく減らします。
