「フレックスタイム制だから、労働時間は自己管理」
「裁量労働制だから、何時間働いても関係ない」
企業の現場では、いまだにこうした説明が当たり前のように使われています。
しかし——
この認識、かなり危険です。
フレックスだから残業代は出ない
裁量労働だから長時間労働でも問題ない
働いた時間は細かく管理しなくていい
こうした運用は、すでに 労基署・裁判実務では否定されつつある のが現実です。
そして今、
労働基準法改正や行政運用の流れの中で、
フレックスタイム制・裁量労働制は「自由」から「厳格管理」へ
大きく舵を切ろうとしています。
この記事では、
フレックス・裁量労働制の基本
なぜ規制が強化されるのか
今後想定される改正・運用の方向性
企業が今すぐ見直すべきポイント
を、専門家目線でわかりやすく解説します。
■ まず整理:フレックスタイム制・裁量労働制とは何か
▼ フレックスタイム制とは?
一定期間(清算期間)の総労働時間を定めたうえで、
始業・終業時刻を労働者が自主的に決められる制度。
ポイントは👇
清算期間内の 総労働時間 は決まっている
コアタイム(必ず働く時間帯)がある場合も多い
残業代がゼロになる制度ではない
▼ 裁量労働制とは?
業務の性質上、
労働時間の算定が困難な業務 に限って認められる制度。
実際に働いた時間ではなく
あらかじめ決めた「みなし労働時間」で計算
ただし、
適用できる職種・業務は極めて限定的 です。
■ なぜフレックス・裁量労働が問題視されているのか?
▼ ① 「自由=無制限労働」と誤解されやすい
現場では、
自分で時間を決められる
成果さえ出せばいい
という意識が強まり、
結果的に長時間労働が常態化 するケースが非常に多い。
▼ ② 実態は“会社主導”なのに制度だけ柔軟
会議時間は固定
納期は厳格
上司からの指示は即対応
こうした環境では、
実質的に労働者の裁量は存在しない にもかかわらず、
制度だけフレックス・裁量労働が使われていることが問題になります。
▼ ③ 長時間労働・過労死との関係が深い
過去の重大な過労死事案の中には、
裁量労働制が適用されていたケースも多く、
社会的な批判が非常に強い制度でもあります。
■ 今後の法改正・行政運用の方向性
ここが今回の一番重要なポイント。
▼ ① フレックスタイム制でも「労働時間把握」は必須に
これまでも努力義務でしたが、
今後は 実質的に義務化される流れ が強まっています。
PCログ
入退室記録
勤怠システム
を使い、
「本当にどれだけ働いているか」 を会社が把握する必要があります。
▼ ② 清算期間内の長時間労働がより問題視される
「月単位では問題ないが、特定週だけ異常に長い」
といった働き方が、
健康配慮義務違反として指摘されやすくなる 方向です。
▼ ③ 裁量労働制の適用要件がさらに厳格化
業務内容が本当に対象業務か
労働者の同意が形式的になっていないか
実際に裁量があるか
これらを満たさない場合、
制度自体が無効 と判断されるリスクが高まります。
▼ ④ 「名ばかり裁量労働」が問題化しやすくなる
実態としては、
指示が細かい
勤務時間が固定
成果より時間拘束が強い
こうした場合、
裁量労働制は成立しません。
▼ ⑤ 健康確保措置の義務が重くなる
長時間労働者への
面談
勤務間インターバル
深夜業の制限
などが、
制度利用の前提条件 になりつつあります。
■ 企業が抱える“実務リスク”
▼ ① 制度無効 → 残業代請求のリスク
フレックス・裁量労働制が無効と判断されると、
実労働時間ベースで
過去2〜3年分の残業代
を請求される可能性があります。
▼ ② 労基署調査の重点対象になりやすい
現在、
裁量労働制・フレックスタイム制は調査対象になりやすい制度
とされています。
▼ ③ 管理職・専門職の離職リスク
「自由な働き方のはずなのに、実際は拘束が強い」
と感じた人材が離職するケースも増えています。
■ 企業が“今すぐ”やるべき見直しポイント
▼ ① 制度の適用対象者を再確認
「全員一律適用」になっていないか。
▼ ② 実際の働き方と制度が一致しているか
裁量が本当にあるかを事実で確認。
▼ ③ 労働時間の客観的把握ができているか
ログと勤怠が一致しているか。
▼ ④ 健康確保措置を制度として整備
面談・上限・休息のルールを明確に。
▼ ⑤ 就業規則・労使協定の再点検
形式だけになっていないか。
■ 従業員側の視点も重要
フレックス・裁量労働制でも、
無制限に働かされる
実態は時間管理されている
長時間労働が常態化
こうした場合、
法的に問題になる可能性があります。
「制度があるから仕方ない」と
我慢する必要はありません。
■ まとめ:柔軟な制度ほど“厳格な運用”が求められる時代へ
フレックスタイム制・裁量労働制は、
本来 働きやすさを高めるための制度 です。
しかし、
コスト削減目的
長時間労働の温床
として使われた瞬間、
企業にとって最大のリスク になります。
今後は、
労働時間の見える化
健康配慮義務
実態重視の判断
この3点が、制度運用のカギになります。
