「夜遅くまで働いて、翌朝の早番でまた出勤している」
「深夜まで残業したのに、翌日は朝イチのミーティングが入っている」
そんな働き方が“普通”になっている職場は、いまだに少なくありません。
しかし今、国が本気で導入を検討している制度が、
勤務間インターバル制度の義務化 です。
これは簡単に言えば——
「仕事が終わってから次の勤務まで、最低◯時間は休ませてください」
というルール。
日本では努力義務として名前だけは存在していましたが、
今後は 「法律で必須」になる可能性 が非常に高いものです。
この記事では、
なぜ義務化の流れが強くなっているのか
どの業界に最も影響するのか
現場はどう変わるのか
企業は今から何を準備すべきか
具体例を交えながら、専門家目線で徹底解説します。
■ 勤務間インターバル制度とは?一言でいえば「休息の最低ライン」
まずは制度の基本から。
勤務間インターバルとは、
終業時刻から、翌日の始業時刻まで最低限確保すべき休息時間
のことを指します。
海外ではすでに一般化しており、
EU基準では 「最低11時間」 が義務付けられています。
日本でも同じ“11時間”が、議論の中心となっています。
■ なぜ今さら「休息時間」を法律化する必要があるのか?
理由は大きく分けて3つあります。
① 過労・睡眠不足による事故・ヒューマンエラーが増え続けている
医療、介護、警備、運送、飲食など…
夜勤・交代勤務が前提の業界では、事故やミスの原因が“睡眠不足”であるケースが後を絶ちません。
徹夜明けの看護師が点滴投与量を間違えた例、
夜勤明けの介護職員が転倒事故を起こした例、
深夜残業の後に運転して事故を起こした例——
こうした事案が社会問題化しているのが現実です。
② 24時間サービス社会の限界が見え始めている
コンビニ、ファミレス、コールセンターなど“24時間営業文化”が長く続いてきた日本ですが、
その裏側には、従業員の生活リズム崩壊 が確実に存在してきました。
深夜残業→短い睡眠→早番
夜勤→日勤への急な切り替え
交代勤務のサイクルが不規則
こうした働き方は、慢性的な疲労を招きます。
③ 国際基準とのギャップが大きすぎる
EU等に比べると、日本の労働時間管理は“長時間働けるようにできている”文化のまま。
そのため、国としても「時代に合った基準」に近づける必要が出てきています。
■ 義務化されるとどうなる?具体的に起きること
勤務間インターバルが法律で義務化されると、
職場には実務的に大きな変化が生じます。
● 例:11時間ルールが導入された場合
23時退勤 → 翌10時以前の出勤は不可
20時退勤 → 翌7時以前は不可
残業で終業が遅れた場合、始業もずらす必要あり
“夜遅かったから、翌朝は普通に出勤”
という働き方は完全にNGになります。
■ 特に影響が大きい業界は?
勤務間インターバル義務化は、
“すでにギリギリの人数で回している業界”ほど痛手になります。
▼ 1位:介護・医療
夜勤→日勤の切り替え、急な呼び出しなどが日常的に発生。
インターバルが義務化されると、
「夜勤明けにそのまま日勤へ」
という運用は完全にアウト。
▼ 2位:飲食・小売業
閉店作業で深夜まで勤務 → 翌朝の開店作業
という“詰め込みシフト”がよくあります。
義務化後は、この形は成立しなくなります。
▼ 3位:警備・コールセンター
夜勤が多い業界は総じて影響大。
緊急対応があっても、翌日の出勤時間変更が必須になります。
▼ 4位:物流・配送業
深夜便→早朝便の切り替えは、11時間ルールが入ると難しくなります。
■ 企業側に訪れる“現実的な課題”
勤務間インターバル義務化が本格化すると、
会社は以下のような運用変更を迫られます。
● ① シフト再構築が必要
今までの“夜遅く→翌朝早く”のサイクルは使えません。
人員不足の企業ほど、再設計が必須。
● ② 欠勤・早退・急な残業に弱くなる
終業時刻が1時間遅れれば、
始業も1時間ずらす必要があるため、
突発対応に弱くなる。
● ③ 勤怠管理システムの改修コスト
インターバル管理の機能がない会社は、
システム入れ替えや追加開発が必要になります。
● ④ 就業規則の変更が必須
法改正が決まれば、
就業規則の変更は避けられません。
● ⑤ 人件費の増加が避けられない可能性
増員が必要になったり、
交代要員が必要になったりする。
■ 従業員側のメリットも非常に大きい
一方で働く人には、多くのメリットがあります。
▼ 睡眠不足の解消
短い睡眠は、
認知能力低下
イライラ
事故リスク
生活リズムの乱れ
の大きな原因になります。
インターバルは“リアルに健康寿命を伸ばす”制度と言えます。
▼ 無理なシフト拒否がしやすくなる
「法律で休ませる義務がある」
と言えるので、強い味方になります。
▼ 家庭生活や育児との両立が改善
長時間労働・連続勤務が減ると、
生活の質が一気に上がります。
■ では、義務化はいつ?
現時点では、
労政審で議論中
報告書の取りまとめ段階
労基法の改正ポイントの一つとして有力
という位置づけ。
ただし、
「義務化は時間の問題」
という見方が非常に強いです。
施行されれば、
企業側は短期間で運用転換を迫られる可能性が高い。
■ 企業が“今”やっておくべき対策
義務化が確定してから動くのは遅い。
特にシフト制企業は、先に準備しておくべき項目がある。
▼ ① まずは現状の勤怠データを分析
「うちは1日の休息時間が平均何時間か?」を調べる。
▼ ② 夜勤→早番のシフトを見直す
急な呼び出しが常態化している企業は特に注意。
▼ ③ 勤怠システムの対応可否を確認
インターバル管理ができるかどうかは重要。
▼ ④ 増員が必要かシミュレーション
義務化後に不足する時間帯を洗い出す。
▼ ⑤ 就業規則の改定を視野に入れる
タイミングを見て動けるよう、準備しておくこと。
■ まとめ:勤務間インターバル義務化は“働き方の質”を大きく変える改正
企業側には負担がある一方、
従業員の健康や安全を考えると、非常に合理的な制度です。
事故防止
離職防止
健康な働き方の確立
中長期的に見れば、会社にとってもメリットになる可能性は大いにあります。
義務化は確定ではありませんが、
流れとしては避けられない方向。
今のうちから準備しておくことで、施行後の混乱を最小限にできます。
