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会社が賠償した後、従業員へ全額請求できる?使用者責任と求償権について判例を踏まえて解説

日野アビリティ法律事務所

「会社が第三者へ損害賠償した場合、その全額を従業員へ請求できるのでしょうか。」

「仕事中の事故を起こしたら、従業員がすべて弁償しなければならないのでしょうか。」

「会社の求償権には制限があると聞きましたが、本当ですか。」

前回の記事では、

使用者責任が成立するための要件について解説しました。

では、

会社が使用者責任に基づいて被害者へ損害賠償を行った場合、

その支払額をすべて事故を起こした従業員へ請求できるのでしょうか。

結論からいえば、

会社には求償権がありますが、必ずしも全額を請求できるわけではありません。

この点について、

最高裁判所は重要な判断を示しています。

会社は事業によって利益を得る一方で、

事業に伴う危険も負担すべきであるという考え方から、

求償額は一定程度制限されることがあります。

この記事では、

会社の求償権と、

全額請求が認められない理由について解説します。

■ 求償権とは

求償権とは、

他人に代わって損害賠償などを支払った者が、

本来負担すべき者に対して、

その支払額の全部または一部を請求できる権利です。

使用者責任では、

会社が被害者へ損害賠償を支払った後、

事故を起こした従業員へ一定の範囲で支払を求めることができます。

これを、

会社の求償権といいます。

■ 民法上は求償権が認められている

民法第715条では、

会社が使用者責任を負った場合であっても、

事故を起こした被用者に対して求償することを妨げていません。

そのため、

法律上、

会社が従業員へ請求すること自体は認められています。

もっとも、

ここで重要なのは、

**「どこまで請求できるか」**です。

■ 全額請求できるとは限らない

法律上、

求償権が認められるからといって、

会社が支払った損害賠償金を、

当然に全額請求できるわけではありません。

もし、

どのような事故でも従業員へ全額負担させることができるのであれば、

使用者責任という制度そのものの意味が薄れてしまいます。

会社は責任を負ったように見えても、

最終的にはすべて従業員へ転嫁できることになってしまうからです。

そのため、

裁判所は、

会社の求償権について一定の制限を認めています。

■ 最高裁判所の考え方

最高裁判所は、

会社の求償権について、

信義則(民法第1条第2項)の考え方を基礎として、

無制限に認めるべきではないと判断しています。

会社は、

従業員を雇用し、

その労働によって利益を得ています。

また、

事業活動には、

一定の事故や損害が発生する危険が伴います。

このような事情を考慮すると、

その危険をすべて従業員一人へ負担させることは、

公平とはいえない場合があります。

そこで、

求償できる範囲は、

**「損害の公平な分担」**という観点から判断されることになります。

■ 「損害の公平な分担」という考え方

裁判所は、

事故によって生じた損害を、

会社と従業員のどちらがどの程度負担するのが公平なのかという視点から判断します。

つまり、

会社にも一定の負担を求め、

従業員だけに責任を集中させないという考え方です。

これは、

使用者責任制度の趣旨とも整合します。

会社は、

従業員を雇用して利益を得る一方、

その事業活動に伴う危険についても負担すべき存在だからです。

■ 求償額が制限される理由

求償額が制限される背景には、

次のような事情があります。

・会社は事業から利益を得ていること

・会社には指揮命令権があること

・教育・監督を行う立場であること

・事故防止体制を整える責任があること

・保険加入などによってリスクを分散できること

これらを踏まえると、

事故の損害をすべて従業員へ負担させることは、

社会的にも妥当ではないと考えられています。

■ どのような場合に求償額が大きくなるのか

もっとも、

求償額が常に少額になるわけではありません。

例えば、

従業員が故意に損害を発生させた場合や、

重大なルール違反を繰り返して事故を起こした場合などは、

より大きな負担を命じられる可能性があります。

一方で、

通常の業務を行う中で発生した軽過失による事故では、

会社側にも一定の負担が求められることが一般的です。

■ よくある誤解①

「会社が支払ったお金は必ず従業員が返済しなければならない」

そのようなルールはありません。

求償権は認められていますが、

裁判所は、

事故の内容や会社の責任などを総合的に考慮して、

請求できる範囲を判断します。

■ よくある誤解②

「会社は全額請求できないので、従業員は責任を負わない」

これも誤りです。

従業員にも責任が認められる場合には、

一定額の求償が認められることがあります。

重要なのは、

事故の内容や双方の責任の程度です。

■ 実務で重要なこと

会社が求償できる範囲については、

一律の基準は存在しません。

裁判所は、

事故の態様、

従業員の過失の程度、

会社の監督状況、

教育体制、

勤務内容、

保険加入の有無など、

様々な事情を総合的に考慮して判断します。

そのため、

会社としても、

「事故を起こしたのだから全額請求できる」と考えるのではなく、

個別の事情を慎重に検討する必要があります。

また、

従業員としても、

会社から請求されたからといって、

当然に全額を支払わなければならないとは限りません。

■ まとめ

会社は、

使用者責任に基づいて第三者へ損害賠償を行った場合、

従業員へ求償することができます。

しかし、

最高裁判所は、

会社が支払った損害を無制限に従業員へ転嫁することは認めていません。

会社は事業活動によって利益を得る一方で、

その事業に伴う危険も負担すべき存在です。

そのため、

求償額は、

**「損害の公平な分担」**という考え方の下で、

個別の事情を踏まえて判断されます。

会社・従業員のいずれにとっても、

事故後の対応や求償の可否については、

専門家へ相談しながら適切に進めることが重要です。

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